雇用保険や失業給付などをFPに相談徒歩で通勤中に、自転車にぶつけられて大ケガをしました。通勤災害の制度について教えて下さい。

徒歩での通勤中に、猛スピードでやってきた自転車にぶつけられて転倒し、顔面骨折し、歯まで折る大ケガをしました。肩や腰も強く打ち、後遺症が残らないか心配しているところです。相手は事故後に逃げてしまい、悔しいですが、行方が分かりません。

通勤災害ということで治療を受けていますので、治療費はかかっていませんが、労災の通勤災害ではどのような補償を受けられますか？また相手が行方不明になったことは、補償を受ける上で影響あるのでしょうか。

FPからの回答

とんでもない事故に遭い、大変な大ケガをなさいましたね。後々、具合が悪いところが出ないだろうかと、後遺症の心配をされるのも無理からぬところです。

通勤途上の災害は、本来、業務上の災害ではありませんが、業務に就く途上での災害ですので、業務災害に準じて労災保険から保険給付が行われます。しかしながら業務中ではないので事業主には補償責任がないことから「補償」という用語は使わず、単に「給付」といいます。

主だった保険給付は、次のとおりです。保険給付の請求書は、①の療養給付は医療機関を通して労働基準監督署に、他は直接、労働基準監督署に提出します。

療養給付（治療費や薬剤費、入院料、移送のための費用等）
休業給付（療養のために休業したとき）
遺族年金（亡くなったとき、遺族に対して）
葬祭給付（葬祭を行った遺族に対して）
障害給付（ケガが治癒したときに一定の障害が残ったとき）
傷病年金（療養開始後1年6ヶ月経過しても治癒していなくて、一定の障害の状態にあるとき）
介護給付（障害年金、傷病年金の受給者で、一定以上の障害の状態になり、介護を受けているとき）

ご相談者の場合、加害者が事故後に行方不明になったことが給付に影響しないかとご心配されていますが、保険給付には一切影響はありませんので、ご心配には及びません。

労災保険の「第三者行為災害」のしくみ

通勤中に交通事故に遭ったり、ご相談のように自転車事故に遭ったり、建設現場の飛来物に当たったりと、第三者（労災保険の当事者である政府、事業主、労災受給権者以外の者）の行為が原因となる災害を、労災保険制度では「第三者行為災害」といい、原則、第三者が損害賠償の義務を負うものとしています。被災者は加害者に対して損害賠償を請求できると同時に労災保険にも請求することが出来ますが、同一の事由で両者から重複して損害の補てんを受けることは実際の損害より多くの補てんを受けることになってしまいますので、どちらか一方からということになります。

通勤途中の交通事故は、ほとんどの場合、自動車保険で賠償されますが、自動車保険に未加入の場合などは、労災保険が保険給付をします。保険給付をした労災保険（政府）側は、被災者に給付した分を加害者に請求しますが、このことを「求償」といいます。

今回のご相談の場合、賠償すべき加害者が行方不明になっていますが、被災者は労災保険で治療を受けることができますので、安心してください。また、休業した場合や障害が残った場合も労災保険の保険給付で保護されます。一方で、保険給付を行った政府は、被害者に代わって行方不明になった加害者に保険給付に相当する額を求償していきます。

自転車事故の加害者になったら・・・万が一に備えて保険に加入することも考えましょう

ここのところ、自転車にぶつけられ転倒して死亡した、または大ケガをした、自転車事故の裁判で多額の賠償金の支払い命令が出されたなど、自転車事故に関するニュースをよく耳にします。ご相談からは外れますが、自転車に乗る人は安全運転を心がけることは当然として、万が一自転車事故の加害者になった場合の対策を考えておく必要があります。

事故の事例を見ますと加害者は、高校生や若年者が多いです。思わぬ事故で多額の賠償金を支払うことになれば、その後の人生に大きな荷を背負うことになります。家族が自動車保険に加入している場合は、日常生活上の損害賠償を特約でつけることもできますし、何らかの方法を考えておきたいものです。

(2015年2月守屋　三枝)

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