生命保険や損害保険をFPに相談「先進医療保障（特約）」は付けた方がよいのでしょうか？

最近は、多くの医療保険に「先進医療保障」が組み込まれていたり、特約で付けられるようになっています。特約形式の場合は本体の保険料とは別にかかりますが、先進医療保障の保険料はひと月100円前後が一般的です。軽い保険料負担で、通算1000万円から2000万円の治療費を保障してくれます。

さて、「100円程度で1000万円もの保障が受けられる」と聞くと、魅力的に思えますが、実際のところはどうなのでしょうか？

この特約について考える前に、「先進医療」がどのようなものなのかを見てみましょう。

一般に、病院で治療を受けると健康保険などから費用が出ますので、患者の負担はかかった医療費の３割で済みます。ところが、保険診療の対象となっていない治療を受けると、その治療はもちろん、すべての治療費が全額自己負担となります。そのような保険適用外の治療のうち一定のものについては、保険対象の部分は３割の負担で済むようになっています。わかりやすいのが個室の利用で、差額ベット代は全額自己負担ですが、その他の治療は公的医療保険から費用が出ており、患者負担は３割です。

先進医療は、「高度の医療技術を用いた療養などで、保険給付の対象とすべきものであるか否か、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な治療」として厚生労働省が認めたものです。その治療自体は保険診療の対象外で全額が自己負担ですが、他の基礎的な治療は保険適用となっています。

現在（平成27年2月）、107種類の治療が先進医療として認定されています。その内、がんの治療に有効であるとして注目されているのが、陽子線治療と重粒子線治療です。どちらも、副作用が少なく、治療効果が高いと言われているのですが、費用がかなり高いのが難点です。厚生労働省の中央社会保険医療協議会の資料を基に計算すると、陽子線治療には約264万円、重粒子線治療には約309万円がかかっています。

先進医療の状況

（厚生労働省　中央社会保険医療協議会「平成26年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」より筆者算出）

先進医療保障は、高度な医療技術を受けた場合の治療費を負担してくれるものです。先進治療を受ける場合に限り、1,000万円までなどを上限として、治療費が保険金として出るようになっています。全額自己負担で高額な先進治療の治療費も、この保障に加入していれば賄うことができます。

ただ、この先進治療はどこでも行っているわけではありません。平成27年2月現在で、陽子線治療は筑波大学附属病院など10施設、重粒子線治療は兵庫県立粒子線医療センターなど4施設のみとなっています。そのため、治療を受けられる人の数は、がん患者全体から見ればごくわずかです。また、すべてのがんに有効なわけではなく、患者数の多い胃がんや血液のがんと言われる白血病などには用いられません。そのため、がんとなった場合でも先進医療保障が役立つとは限りません。

しかし、陽子線治療や重粒子線治療を行う医療機関は徐々に増えています。将来的には今よりも実施件数が多くなることが期待されています。そうなれば、先進医療保障による保険給付も増えてくるでしょう。最終的には、安心感と費用の兼ね合いでの判断となりますが、費用負担が軽いので、将来への安心料と考えることもできます。

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